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シグマ建設株式会社

木造トラス構造の挑戦

シグマのこだわりの施工をご紹介します

近年、店舗や公共建築物などの中~大規模建築物の木造化が進んでいます。
なぜ、木造建築物が注目されているかというと様々な理由があります。
耐久性・断熱性などの性能面、さらには気になるコスト面など、木造・鉄筋コンクリート造・鉄骨造を比較してみます。

[比較]
  コスト 耐久性 耐火性 断熱性 大空間
木造(在来工法)
鉄筋コンクリート造 やや悪
鉄骨造 やや高 良(長時間悪)
[断熱性]木造・鉄筋コンクリート造・鉄骨造の熱伝導率(熱の伝わりやすさ)の数値は下記のようになります。
木材 0.12~0.15W/m・k
コンクリート 1.6 W/m・k
鋼材(鉄) 53 W/m・k

これを見て頂ければお分かりのように、コンクリートは木材の10~13倍、鉄は木材の350~440倍も熱を伝えやすい材料になります。
上記の表から、木造在来工法はコスト・断熱性などの面で鉄筋コンクリート造・鉄骨造よりメリットがあることが分かり、
デメリットは大空間の確保が難しいということが分かります。

しかしその大空間の建築においても、近年では、従来からの木造トラス工法が取り入れられたり、
新たな工法として木造ラーメン工法、木造大断面工法、CLT工法などが注目されています。

最近シグマでも“この建物は木造??”という物件に携わりました。
その中から今回2棟を紹介させていただきます。

I HOUSE


Case 1

意匠設計:トラフ建築設計事務所
構造設計:オーノJAPAN
施工:シグマ建設
トラスの種類:平行弦トラス

建築実例

まずは、2016年に施工したI HOUSEを紹介します。
写真を見たとき、建築関係の方でもこの住宅が木造であるとは思わないでしょう。

この意匠設計は、トラフ建築設計事務所さんによるものです。
トラフさんは店舗やオフィスの内装デザインから展覧会などのプロダクトまで、国内外で活躍されている事務所です。
構造設計を手掛けたのは、オーノJAPANという構造設計事務所です。オーノさんは有名建築家の構造設計を様々手掛けている事務所です。

このI HOUSEは、1階にアトリエと寝室の2つのBOXを配置し、2階にLDK、玄関、水廻りの切妻屋根のBOXを乗せた設計になっています。
このプランだと、2階部分を支える柱がなく、従来の軸組み工法では構造的に成り立たない為、平行弦トラスを採用することになりました。
シグマでは設計事務所さんから施工のみのお仕事をいただくことも多いのですが、ほとんどの案件でこのように構造専門の設計事務所さんが構造設計を行なっております。

平行弦トラスとは、橋桁(トラス橋)をイメージしてください。
連続した三角形で構成され、上弦梁、下弦梁、斜材で応力を伝えます。
トラス構造の部材同士の接点はピン接合になっていて、接点はガセットプレートで接合していく仕組みです。

トラス接合部の納まりと施工の流れを説明させていただきます。

トラス接合部の納まり

各材に加工されたスリットにガセットプレートを入れ、ドリフトピンで固定します。

①ガセットプレートは各接合部ごとに構造計算されたもので、プレートの厚み、大きさドリフトピンの数・太さまですべて特注の金物です。今回のプレートは厚み6mmで統一されています。

②上弦梁・下弦張・斜材の各材にはガセットプレートが入るスリットが加工されています。スリット幅はガセットプレート6㎜に対し+2㎜の8㎜幅です。

③ドリフトピンもΦ16㎜の特注品になります。ドリフトピンの径に対し、材木の孔径は±0㎜とし、ガセットプレートの孔径は+1.5㎜の17.5㎜で製作しました。

各材の中心が交わる点をブレースポイントと言います。
ブレースポイントを基準に各斜材の位置・角度が決まります。

  • 下弦梁にシグマから特注したガセットプレートを設置し、
    ドリフトピンを打ちつけ固定します。

  • 下で組み上げた10.92mの下弦梁を一気にレッカーで釣り上げます。

下弦梁を設置し、斜材、上弦梁の順で部材を組み上げていき平行弦トラスの形になります。

建て方完了後の写真です。1階部分は2つのBOX上になっていて、2階部分が橋桁のように乗っている設計です。
最大10.92mのスパンを飛ばしています。木造ではなかなか見かけない構造です。
ぞれぞれの1階部分には2階の大きな力が伝わるため、基礎・軸組共に強固な設計になっています。

建築に携わっていない方が見ても、この建築が木造だけで成り立つ構造とは想像もつかないと思います。
長年木造建築に携わってきましたが、なかなか経験のできない工法に取り込むことが出来ました。
これからは、このような木造建築も徐々に増えてくると思います。

この住宅は、新建築住宅特集(新建築社)2018年9月号でもとりあげられました。
シグマでは今後もこのようなチャンスを頂ければ、進んで取り組んでいく方針です。

auショップみらい平


Case 2

auショップみらい平

設計・施工:シグマ建設
構造設計:エスフォルム
トラスの種類:張弦梁トラス

施工状況

次にシグマの設計・施工、auショップみらい平を紹介させていただきます。

従来のモバイルショップは、外観・内観共に箱型の鉄骨造というイメージがあると思います。
近年のモバイルショップでは、店舗・駐車場の広さが求められる上、将来の間取り変更に対応するため建物内部の柱は極力外す方針になっています。
このauショップみらいでは、鉄骨造と同じ大空間が確保できるのであれば、木造でもよいとの承諾をオーナー様よりとりつけることが出来ました。
シグマからの提案は、トラス工法を取り入れた木造の空間です。
構造設計はシグマ建設新社屋を始め、シグマの様々な物件の構造設計に携わっていただいているエスフォルムさんです。

空間デザインやコスト面も大切ですが、省エネ性能についても特に重視して検討しております。

木造にすることにより、躯体自体の熱伝導率が下がります。(鉄骨に比べて熱が伝わりづらくなります。)
現在建築物の用途や規模によって届出が義務化されている建築物省エネ法に基づき一次エネルギー消費量の算定はもちろん、
断熱材の施工に関しても住宅レベルの平成28年基準をベースとしています。
天井は外断熱、壁はグラスウールの充填断熱、床は基礎断熱とし、気密性も確保しています。
建物の断熱性能を上げることにより冷暖房のランニングコストも抑えられ、建物のコストも鉄骨に比べ抑えることができました。

続いて、このトラス工法についての説明をさせて頂きます。

14.56mのスパンを飛ばすために大断面の木材の梁を使用すると、材料費が上がってしまうため大空間の形状を利用した小断面材(上弦梁 120×330、下弦梁・斜材・束 120×120)による木造トラスを採用することとしました。大断面材にすると、梁成や中間部分はあまり仕事をしていないのですが、トラスにすると上弦材、下弦材、斜材とも断面をフルに活用することができます。通常の梁では、荷重がかかった場合上面と下面で最大の応力度となり、その応力度が許容値を超えないようなサイズの梁を選ぶことになります。

この時中央部分は応力を持ち余している状況にあります。
トラスでは断面のすべてが応力を負担しているので、遊んでいる部分がない集約された工法ということが言えます。

  • 平行弦トラスと同じく、接合部はピン接合になりガセットプレートで接合します。シグマから特注した各接合部のガセットプレートです。

  • スラブ上でトラス材を組み上げます。

  • Φ20mmのドリフトピンで固定します。

  • 組み終えたトラス材をレッカーで吊り各場所に設置します。

  • 柱とトラス材はドリフトピンとボルト併用し接合します。

  • トラス材の設置が完了。1.82mピッチで5本、最大14.56mのスパンを柱なしで飛ばしています。

内装の天井は梁や合板を見せる表し仕上げとし、落ち着いた雰囲気にするため、木目を出す白塗装としました。
従来のモバイルショップの印象とは違う柔らかい仕上がりになりました。

今回紹介した2物件は共に特殊な架構の建物で、構造計算は壁量計算だけではなく、構造一級設計士による許容応力度計算によって設計されています。
許容応力度計算をすることにより設計の自由度も広がり、接合部についても詳細に確認されている為、安全性は確保されています。

シグマではこれからも、少しでも木造の限界に挑戦し、木造ならではの空間作りに取り組んでいきます。