メモリアルホール岡部新店舗
畑と住宅に囲まれた仏具店舗
建築設計:シグマ建設ONO一級建築士事務所
構造設計 : 瀧本信幸
施工:シグマ建設株式会社
写真:千葉 顕弥
旧岡部町(現・深谷市)の市街化調整区域に建つ、葬祭場の仏具店舗・事務所計画である。
地域の主要道路から小道を入った先に、畑と住宅が広がる穏やかな環境がある。
既存の葬祭場と旧事務所はその一角に建っていた。
2010 年代以降、終活の普及に伴い、葬祭場は儀式の場にとどまらず、
セミナーや相談会など、生前から地域と関わる拠点へと役割を広げつつある。
そのため本計画では、地域に対する心理的距離を縮める店舗・事務所機能の新設が求められた。
必要諸室を積み上げると約300 ㎡弱となり、既存敷地内での建設は困難であった。
市街化調整区域という制約下で用途および敷地の扱いを再検討し、
隣地の雑種地の一部を分筆し既存敷地と合筆することで、新たな敷地を構成した。
一方、既存葬祭場と一体で計画すると敷地全体が1,000 ㎡を超え、
再度開発許可が必要となること、さらに前面道路幅員が不足していることが判明した。
そこで、両敷地の間に、既存ホールでお見送りを行う際の車両動線に沿って腰高の塀を巡らせることで敷地を分節し、
葬祭場棟と店舗・事務所棟を別用途・別敷地の建築物として成立させる事とした。
制度的要請から生じたこの分節を契機に、擁壁状の塀を利用して、
故人を送り出すためのプロムナードを構成している。
空間構成においても、「分節」と「統合」を主題とする事で、店舗や事務所、ラウンジといった開かれた機能に対し、
倉庫や休憩室、相談室など閉じた機能が併存するプログラムである。
両脇に倉庫や相談室等のクローズなボリュームを配置し、それらに水平剛性を担わせる一方、
中央には寄棟架構を架け、開かれた店舗空間を成立させている。
空間的には分節しながらも、構造的には一体の架構としている。
中央のスペースにはビル用・住宅用サッシを適宜組み合わせ、
前面道路・店舗・既存葬祭場がそれぞれ視線の連続を感じられる設えとした。
店舗事務の上部には合わせ梁を用いてブリッジ状に執務室を架け、奥のラウンジや倉庫へと動線を接続する。
複数の吹抜けとブリッジが重なり合い、多層的な広がりを内部に生み出している。
プライバシーを要する諸室も極力完全な個室とはせず、
ポリカーボネートの欄間や腰壁手摺によって緩やかに仕切った。
距離と透過性を調整することで、建物全体に奥行きと気配の連続が生まれるよう配慮している。
外観は、中央のボリュームを前面道路側へせり出させ、両脇をセットバックさせることで周囲の住宅スケールに応答した。
既存ホールを含めた建築群としての関係を再編し、単体ではなく「群」として地域に位置づけることを意図している。
本プロジェクトは、敷地・ボリューム・プログラム上の分節を出発点としつつ、
それらを空間的・機能的な連続性によって編み直すことを試みた。
分節を単に分ける操作としてではなく、関係性を生み出す契機へと転換している。
葬祭施設は、生と死の境界に位置するが故、地域の中で心理的に距離を置かれやすい建築でもある。
本計画では、その分節を構成原理として受け止め、閉じるべきものと開くべきものを慎重に織り合わせることで、
セレモニーホールの仏具店という非日常空間を日常の生活へと接続することを試みた。
この建築が周辺環境と穏やかな群を形成しながら、生と死を内包する場として地域に受け入れられ、
これからの町中の葬祭施設の在り方を静かに更新していくことを願っている。